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Blog:西村一郎活動日誌

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「食育における生協の役割り」

(財)生協総合研究所 研究員 西村 一郎

・ 食育とは
 最近、学校教育や子育てなどの場で、食育という言葉が時々使われている。食について自立する力を育むことを食育は意味する。食育との言い方は、明治時代の初期に学校の制度議論をしていた頃に、知育・体育・徳育などと並んで現われていた。しかし、その後に知育や体育ほど深く議論されることはなく、このため調査や研究なども不充分であり、概念規定もきちんとできているとはいえない。
 ところが、最近になってまた食育が我が国で注目を集めるようになった。子どもの健康面で、誰もが気になる問題が急増していることと関連している。視力の低下と多いむし歯とあわせて、特に著しいのはアレルギー症状である。アレルギーと一口に言っても、アトピー性皮膚炎や花粉症や喘息などいくつかの症状があり、すでに小学生で4割台が影響を受けている。
 例えば花粉症は、すでに我が国の子どもだけでなく、若者や成人を含めて実に2000万人がかかっているとのことである。その多くは杉による花粉症であり、なぜか日本だけで発生している症状である。つまり花粉症は、患者の数からしてもそうだし、要因からしても日本の国民病と表現することができそうだ。
 ちなみに杉による花粉症が最初に人で認められたのは1963年(昭和38年)であり、それ以降、各地の専門家が食事や環境や遺伝などとの関連で原因を調べているが、完全に解明されているわけではない。このため治療法が未整備なこともあり、残念ながら患者は増えることはあっても減ることは当面ないようだ。
 こうしたアレルギー症状に、食事が大きく関係していることは間違いない。事実、食事を工夫することによって、アレルギーの症状が少なくなった人もたくさんいる。
 他には、子どもにも広がる生活習慣病がある。肥満や高コレステロールの小学生が増大し、生活習慣病で死亡する中学生や高校生も現われている。具体的には糖尿病や動脈硬化で、糖分や脂肪分の取りすぎによって起こる病気である。たとえ子どものときに発病しなくても、大人になってがん・心臓病・脳卒中などにつながる危険性が高い。
このような背景の中で、もっと食事や食生活に注意することが大切であるとして食育の重要性がクローズアップされてきた。ただし、論者によって食育のポイントの置き方は異なり、そもそも食育という言葉が、食事教育の略であることもあれば、他の人は食生活教育や食文化教育を意味することもある。
 最近ではJAなどが中心になり、1998年から食と農業をリンクさせた食農教育という言葉をよく使うようになってきた。食育を大きな概念で捕らえれば、食と農業の関連性を重視する食農教育も食育の一部であると認識していいだろう。

・ 学校教育での食育
 学校教育の場においても、こうした食の自立を促す食育の重要性がこれまで以上に強調されている。もちろん長い歴史のある学校給食は、食べ物を児童に提供するだけでなく、教育的な位置付けも以前からあった。
 それ以外にも学校教育で、最近は食育を強調する流れができている。96年の中教審答申では、「生きる力」の重視を打ち出し、2000年に当時の文部省は、食に関する指導参考資料として次のような指導内容を示した。
 ① 栄養の偏りのない食事を楽しくとることが、日々の健康や心の安定につながる。
 ② 子どもの頃の偏った食習慣は、将来の生活習慣病につながる。
 ③ 正しい食生活は、健康な体と心をつくる。
 ④ 将来の食習慣を形成する上で、小・中学校の時期が極めて重要である。
 ⑤ 食事や当番活動を通して、豊かな心や望ましい人間関係を育成する。
 ⑥ どのように食環境が変化しても、食の自己管理が実施できる能力を育てる。
 ⑦ 地域で培われた食文化を体験し、郷土への関心を深める。
  実際には次のような場面において、食についての教育がされている。
 

 ① 給食の時間の中で(計画的に学校給食を生きた教材として活用した体験を通して   繰り返し指導)
 ② 各教科の中で(生活科、体育科保健領域、家庭科、理科等)
 ③ 特別活動の学級活動の中で(年間3~5時間の確保)
 ④ 道徳の中で(給食時間の指導のねらいと関連をもたせて)
 ⑤ 学校行事の中で(心を育む学校給食週間等の実施、異学年やお花見給食等の      交流給食や地域のお年寄りを招待する招待給食)
 ⑥ 総合的な学習の時間の中で
 ⑦ 学校保健委員会等の中で(学校・家庭・地域の関係機関相互で食の実態を共有
   化し、指導内容を検討する)
 こうした考えに沿って、2002年度から全国で実施されるようになった「総合的な学習の時間」により、全国の小学校における食育の取り組みが一段と展開されている。

・ アメリカにおける食育は
 子どもの成長を育み健康を守るために、世界の各地で創意工夫した食育がすすんでいる。例えばデンマークでは、子どもの興味をもつマンガなどをたくさん使い、3歳児から健康栄養教育をしているし、中国では五重塔になぞらえて5段階の食生活指針を表示している。そうした中でも、肥満や心臓病など生活習慣病で多くの国民が病んでいるアメリカ合衆国では、大規模な食育がこの間に展開されており日本でも注目に値する。
 以前から欧米では、「キッズ・イン・ザ・キッチン(子どもを台所へ)」運動が広がり、食育をテーマにした絵本や人形やゲームなどが子どもたちの間で好評である。1990年代に入ってアメリカでは、栄養教育の指針を平面的な四食群から食べる必要量のわかる立体の四面体へと変更し、あわせて子どもの五感を全て使って楽しく参加し体験するプログラムを開発した。
 その代表例が、小学校3年生を対象にパソコンの視聴覚教材として作成した「5(ファイブ)・ア・デー探検」である。「5・ア・デー」とは、1991年にアメリカのPBH(農作物健康増進基金)とNCI(国立ガン研究所)が協力し、生活習慣病を防ぐためにも、1日に5サービング(握り)の野菜や果物を食べようと呼びかけた運動である。
 このCD-ROMでは、30種類以上の野菜や果物のキャラクターが登場し、歌って踊る。最初のページには、「サラダ工場」、「冒険の劇場」、「野菜の役割りを旅してー5・ア・デーの土地」、「キッチン」、「ボディー・ショップ」の5つの建物があり、それぞれにドアがあって好きなところから入っていくことができる。テレビゲームのようにして画面を進めていくと、それぞれの野菜や果物がどこから来て、人体にどのような役割りをするのか教えてくれる。他にもラベルの表示の読み方や食生活指針のピラミッドなどの説明もあり、楽しく遊びながら食育ができるようになっている。
 全てを見れば、55の物語のアニメーションと10曲の音楽を楽しむことができる。
このような運動をアメリカの官民が連携して取り組み、スーパーマーケットの35000店以上が協力して青果部門の見学会をおこない、毎年400万~500万人もの小学生が参加し、あわせて子ども向けの楽しい食育の演劇も各地の学校で上演している。
 こうした結果、3年間で野菜の消費が15%と果物は17%も向上し、野菜と果物の平均消費量は3.9サービングから4.4サービングまで増加し、生活習慣病による死亡率が減少するなどの成果が現われている。

・ 日本における「5・ア・デー」の動き
 野菜や果物の利用が毎年のように減少し、あわせて生活習慣病が増加している日本でも、この「5・ア・デー」運動が注目されている。具体的には、JA全農や青果卸会社などで組織する「青果物健康推進委員会」と、外資系流通業者ドールやジャスコを経営するイオングループなどが関わっている「ファイブ・ア・デイ協会」の動きである。どちらも2002年7月に発足して活動を開始した。
 まず青果物健康推進委員会では、食育を含めて6つの部会を立ち上げ、料理の栄養価を数字化したベジフルスコアを作成し、また大学の講師たちでベジフルティーチャーを組織して全国の小中学校に派遣する体制を作った。
 他方のファイブ・ア・デイ協会は、以下の啓発を目的としている。
 ① 野菜・果物の特性、機能と栄養素などの情報を活用して、健康増進への効果に
   つなげる。
 ② 野菜・果物の特性、機能や必要摂取量について正しい知識を広める。
 ③ 野菜・果物の特性や機能をもとに、様々な質と量と食べ方の知識を広める。
 ④ 野菜・果物のより良い選び方、食べ方、料理方法についての知識を広める。
 ⑤ 野菜・果物を食べる生活を知識として子どもの時から学ばせ、食習慣として定着
   させる。
 活動としては、アメリカのCD-ROMを日本語に翻訳し、アニメの書き直しもして、希望する全国の学校へ無償で寄贈している。このCD-ROMには、次のような各アトラクションが備わっている。
 ① サラダ工場:何を食べたらいいのかな?
 ② HBフィットネスクラブ:ビタミンを追いかけよう!
 ③ クッキングスクール:調理のしかたを探ろう!
 ④ アドベンチャーシアター:農地や歴史をたずねてみよう!
 ⑤ 5A DAYヒットチャート:楽しい音楽で野菜博士になろう!
 ⑥ トラベルカンパニー:5A DAYを色々楽しめる!
 また食育体験としてジャスコの店などを訪ねた子どもたちは、野菜売り場で地場の野菜を求めてサラダを作っている。
 この「ファイブ・ア・デイ協会」には、茨城県に本部のあるローカルチェーンのカスミも参加し、ジャスコだけでなくこれから各地の食品スーパーにおいて子どもの食育体験が広がっていくことだろう。

・各地の生協では
 消費者のくらしを自らの手でより豊かにしようとする生協は、安心・安全な食にこだわ 
り、子どもの食育につながる活動を各地で展開している。
 ① 農業小学校で自然に触れて
 いわて生協では、地元の農協などと協力して畑2反(20アール)と水田9畝(せ 9アール)を利用して、1999年の春から農業を体験する小学校を開いている。この農業小学校のめざすものは、次の4つである。
 ・ 自分で食べるものを種から育て、実際に食べてみる活動を行います。
 ・ 子どもたち自身の自治の力で学校を運営し、困難を乗り越え、協同の力を
  養います。
 ・ 自然の中で思いっきり遊ぶことを通して、人間や自然との交流をはかります。
 ・ 活動全体を通じて、命の源である農業の大切さと、それを営む人々が安心して
  暮らすことのできる自然環境を保全することの重要性を学びます。
 こうした考えにそって約40名の子どもが、月に2回の土曜日を使い、次のような年間スケジュールをこなしている。
 4月:学校びらき(楽しいゲームで友だちづくり、わたあめ遊び) 5月:じゃがいも・大豆・すいか・とうもろこしなど作付け・田植え 6月:草取り・自然観察・マジックスクリーン 7月:そば種まき・えんどう収穫 8月:川遊び・花火・すいか収穫 9月:枝豆・ジャガイモ収穫・稲刈り 10月:農業祭(焼肉食べ放題) 11月:豆腐・みそ作り・紙すき 12月:餅つき 1月:スキー教室 2月:そば打ち・ウインナー作り 3月:学校しまいの会
 ジャガイモの収穫はあいにくの雨となり、カッパや長靴での作業となり、子どもたちは大変に苦労したようだ。参加した子どもの感想である。
 「きょうのジャガイモほりはたいへんだったけど、ほってみたら、ありとかコオロギとかが、びっくりしてひなんしていました。きょうは雨だったけど、雨の日にもいいことがあってよかった」
 ②農家での子ども交流
 みやぎ生協では、2002年8月に3泊4日のスケジュールで、小学校3年から6年生の20名を対象にし、北海道音更町において子ども交流体験を実施した。
 地元の農家にホームステイした子どもたちは、広い北の大地の中で、バターやヨーグルトやパン作り、芋掘り、昼食用のカレー作り、そして川下りなどを楽しんだ。
 他にもみやぎ生協では、「産直ふるさとこ~ぷの旅」として、各地の生産者を訪ねて親子で交流することを計画し、次のようなコースを企画した。
 ・ JAみどりの(田尻)コース:1泊2日でパークゴルフ、ウインナー作り、野菜の収穫
  体験、そば打ち体験、朝食作りをする。
 ・ JAみやぎ仙南(角田)コース:1泊2日で、産直ふるさと豚と堆肥センターの見学、
  産直梅干土用干し体験、梨畑見学、バーベキューで生産者との交流、バター作り、
  乳搾り、野菜の収穫体験をする。
 ・ JAみやぎ仙南(蔵王)コース:日帰りで産直の見学、プラムの収穫、そば打ち、
  ニジマスのつかみ取り、バーベキューをする。
 ③ 夏休みは親子で産地へ
 首都圏コープ事業連合では、夏休みを使って親子の産地ツアーを実施し、都会を離れた親子は、産地の豊かな自然や風土と親しんでいる。
新潟県にある笹神(ささかみ)村は、1990年に全国に先駆けて「ゆうきの里ささかみ」を宣言し、「土づくりは村づくり」を合言葉にして、村ぐるみで環境に優しい農業をすすめている。
 そうした笹神村と首都圏コープとJAささかみは、2000年に「食料と農業に関する提携」を行い、同時に交流をスタートさせた。2002年夏には、泥んこ運動会、自然に触れる「生き物観察」、畑や川から食材を自分たちで探し集めて夕食を作る「ささがみグルメの達人」といった楽しい内容で、子どもも交えて交流した。こうした夏以外にも、田植え、稲刈り、冬の火祭りなどで笹神村を訪ねる企画を開催している。
 ④ 協同村ひだまりファームでの体験
 生活クラブ生協・東京は、秋川のほとりに3500坪もの協同村ひだまりファームを持っている。広い敷地には、築100年ほどの民家を中心に、果樹園や畑が広がり、組合員はバームクーヘン、スモークソセージ、ハンカチの草木染め、布ぞうり作り、じゅず玉ブレスレット作りなどを体験することができる。
 1月から2月にかけて、協同村では次のようなイベントを案内している。
 生芋からコンニャク作り、夏みかんもぎ、どんど焼きとほうとう作り、ブルーベリーの脇芽プレゼント、カエルの卵観察会、樹木観察と七草粥、ダッチオーブン料理の見学と試食、バードウォッチング
 自然に触れることの少ない都会の子どもは、時間の流れがまるで違う協同村での体験を楽しんだことだろう。
 ⑤ タオルを集めて乳牛に
 市民生協にいがたでは、集めた未使用のタオルを持って、魚沼牛乳の牛を親子で訪ねる企画をおこなった。新しいタオルで、搾乳の前後に牛の乳房を拭く。参加者は、牛舎で大きな乳牛を見て、生産者からこだわりなどについて話を聞いた後で、バーベキューをしつつ交流した。
 他には、親子クッキングも開催している。あるとき14組の親子が参加して、簡単ランチメニューのサーモンキッシュ・タコのカクテルサラダ・子大豆もやしのカレースープを作った。あるお母さんの感想である。
 「子どもも思う存分調理でき(家では、つい手を出し、口を出してしまうので・・・)楽しく参加できました」
 次は参加した子どもの声である。
 「玉ねぎで目が痛くなりましたが、おいしかったです」
 「自分で作ったからぜんぶおいしかった」
 子どもたちに調理する楽しさがより広がったようだ。
 ⑥どじょうつかみに挑戦
 名古屋勤労市民生協では、2002年の9月に長野県にあるJA上伊那との交流会をもち、親子連れを含めて1100名が参加した。ぶどうやとうもろこしを収穫し、そば打ちやまゆ工芸教室もあれば、ちびっこ広場でのどじょうつかみも大好評だった。
 親子で参加した人の感想である。
 「子どもたちも親もいい経験ができてよかった。どじょうつかみもとうもろこし収穫も初めてだから」
 捕まえたどじょうを食べたのか分からないが、ヌルヌルした手触りや、ときにはキュッと鳴くことなどで、子どもたちにどじょうへの興味がわいたことは確かだろう。
 ⑦育てた稲で縄跳び
 京都生協では、JA京都美山支店と協力して「稲刈りの集い」をもち、2002年の春に田植えした稲を、鎌で一株ひとかぶを参加者は刈り取り、束ねてから天日で乾燥させた。こうして脱穀すると長いワラがとれるので、縄やしめ縄にすることができる。
 稲刈りの後で、参加者は縄作りにも挑戦した。やっとできた縄を使って、子どもたちは縄跳びをして遊ぶ。また家族でライスセンターも見学し、お米が精米されていく様子を見ることができたので、籾から玄米となり、さらに白米となっていく変化を理解することができた。
 また2002年の9月に京都生協では、鳥取県と協力して1泊2日の鳥取産直わくわくツアーをおこなった。子どもを含めた55名は、二十世紀梨のもぎ取り、アイスクリームを手作り、乳搾り、白ねぎの収穫などを体験し、あわせて地元の「魚を食べる会」や「白ねぎ料理研究会」の手作り料理を楽しみ、生産者との交流して鳥取県のファンになった。
 また子どもの食育を応援する京都生協は、「より豊かな学校給食をめざす京都集会」にも参加し、この分野での議論がさらに広がっていくことに努めている。
 ⑧おいしいは生活の大事
 日本で最大の生協であるコープこうべでは、食生活のあり方を子どもも含めて組合員と一緒になって考える取り組みをすすめている。この食生活キャンペーンは、1985年に機関紙へ載った子どもが描いた食卓の絵がきっかけとなった。小学校5年生のかいた夕食風景は、テーブルの上にインスタントラーメンだけである。
 それからは、「食べようね赤・緑・黄」とのキャッチフレーズを展開し、最近では「おいしさはせいかつのだいじ」と表現を新たにし、年齢や性別を問わず、生活する一人ひとりが自立し、食に対する問題意識を高め、自ら食材を「選び」、「おいしく作り」、「楽しく食べる」力をつけることを目指している。
 特に子どものころからのよい食生活習慣づくりに力を入れ、さまざまな学習や体験の機会を作っている。
 この1つとして、『-フードくんとクックちゃんの-おいしいはせいかつのだいじブック』を独自に出版し、子どもたちに食や健康についてさまざまな角度から考えてもらい、楽しみつつ食べることの大切さを学んでもらっている。
 また主催する生活文化講座の中には、月1回で3か月連続の子どもクッキングがあって子どもたちに好評である。小学校3年生から中学3年生までを対象としたこの教室は、次のような呼び掛け文を出して、2002年度だけでも39回で780名が参加している。
 「今では、料理の出来る人が一番好かれるそうです。子どもの頃に覚えたコツは一生の宝です。お友達と料理を作る楽しさと、食べる喜びなどを学びましょう」
 他に子どものための食を体験する場としては、マリンスクールや虹っ子ライフスクール「おとうふ博士になろう」なども開いている。
 ⑨親子でエコクッキング
 コープかごしまでは、夏休みを利用して親子エコクッキングを開き、あるときの教室では12組の親子28名が参加し、環境を考えつつカレーライスとフルーツポンチを作った。
洗った野菜は、重量を少なくするためザルで乾かしてから皮をむく。ただし、無農薬で育てたニンジンは、タワシでよくこすってからそのままで使い、無洗米を使って参加者で食べることのできる量だけとした。
 このとき出た生ゴミは、参加者別に計って発表した後で堆肥にして畑に返す。
美味しく食べた後は、汚れの少ない容器などから洗い、またお皿に付いたカレーはまず紙でふいてから洗うなどして、節水にも心がけた。
 参加した子どもの感想である。
 「ほうちょうがじょうずにつかえたのでたのしかった。ごみがすくなかったからすごいとおもった」
 こうしたエコクッキングの取り組みをコープかごしまは、独自のパンフレットにまとめて普及をすすめている。

・ 生協における食育を構築するために
 このように各地の生協で子どものための食育の取り組みはすすんでいるが、この分野で組合員や社会が全国の生協に求めるレベルに到達しているとは言えないだろう。個別には子どもの食育に積極的に取り組んでいる生協があっても、全国の生協で一丸となって活動している状態ではない。ファイブ・ア・デイ協会のように、我が国の小売業界でも積極的な動きが出始めていることをみると、全国の生協ですることはまだいくつもある。
 ところで生協法で生協は、「国民生活の安定と生活文化の向上を期することを目的」と規定している。このため生活の中で大きな比重を占めている食生活の安定と食生活文化の向上は、生協運動にとって大切な目的である。
 あわせて各地の地域生協では、事業領域を食に絞ることで経営を強化しているので、食関連の商品を通して、組合員のくらしを応援することが生協の使命でもある。また組合員の多数を占める母親たちは、適切な食生活をすごして健やかに我が子が成長することを強く願っている。
 こうしてみると、子どもの食育に生協が正面から対応することは、生協としての存在価値にも関わる重要なことである。そこで運動と事業を連携して、食育を応援する生協の総合的な取り組みが急務となる。
 では効果的な食育に生協が取り組むためには、いったいどうすればよいのだろうか。
第一に、価値観を転換して食育についての考え方を整理することである。そもそも食育は、食における個人の自立を育むわけだから、強制して知識や技術を修得させるのでなく、本人がまず興味を持って自主的に学ぶことが重要である。
 個性のある1人ひとりが食に興味を持つには、誰にでも対応する1つだけの答えでなく、いくつもの方法や答えがあってかまわないし、むしろ多様な体調や家庭や地域などの諸条件によって個人の食は影響を受けるから、食育に多様性をもたすことが大切だろう。
 また、アレルギー症状のように原因のわからない問題が広がっている現在、理論を先行させてこうあるべきだと展開する演繹法的な捕らえ方よりも、個別の成功事例から積み上げていく帰納法的な進め方が効果的である。
 つまり、全国の生協で展開できる一律の食育がどこかにあるわけでなく、各地の成功事例や失敗事例を参考にしつつ、独自の時間と労力を使って築いていくべきものだろう。
 第二には、運動面における取り組みの強化である。いくつかの生協では、子ども料理教室・親子エコクッキング・キャンプ・農業小学校などを運営し、子どもが楽しく食を体験できる場をつくっているし、その役割はこれからもより大きくなるだろう。
 同時に、地域における食育のネットワークにおいても、生協は大きな役割を発揮することができる。このためJA(農協)、JF(漁協)、森林組合、保育園や幼稚園、教育委員会、学校、PTA、地方行政などと協力すれば、より幅の広い展開が可能となる。
 教育機関と生協が食育で連携することができれば、広範な子どもたちに食育の場を提供することができる。またJAなど食の生産者団体は、国内における生産の大切さを人々に定着させるためにも、これまで以上に食育の課題を重視しているので、協力関係を築けば双方にとっても意味のある展開が期待できる。
 さらに情報の交流では、これまでの顔を会わせて直接に伝える方法や機関紙誌などの紙媒体だけでなく、近年のインターネットを通しての方法も大きな力を出すことができる。
 第三には、事業面でも子どもの食育を支援する課題がいくつかある。例えば、子どもが参加しての商品開発も効果的である。すでに直接に子どもが関わったケースでは、ちばコープの「プチ肉まん」やならコープのアイスキャンディ「フルーツだソーダ」などがある。
 また間接的にせよ子どもの要望を反映させた商品開発では、コープかごしまの異なる種類を合わせたクリスマスケーキ「ユニオン」、4種類のケーキをクリスマスケーキ用に組み合わせたコープとかち、さらにはアレルギーの子どもでも利用できるクリスマスケーキを導入したエフコープの事例などがある。
 こうして商品開発に関わった子どもやその親たちは、願いを実現してくれた生協の存在にどれほど信頼を強めるかわからないし、食への興味はかなり高まって食育への効果が出ることだろう。
 健やかな子どもを育てることは、健やかな社会を創るためにも極めて大切なことである。そのため子どもの食育に、資本の論理でなく協同の論理で動く生協が、全国レベルで総力をあげて取り組むことが今求められている。

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