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Blog:西村一郎活動日誌

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全身で命を歌う仲間たち

        ―たんまち福祉活動ホームの歌声ー   06,08,13    西村 一郎

・ 全身で歌声を

「手の平を太陽に かかげてみれば

  真っ赤に燃え立つ ぼくの血潮・・・・」

角田先生の電子ピアノに合わせて、障がいを持った40人ほどが元気に歌っていた。歌うといっても口を充分に開けることのできない人は、メロディーに乗って全身を必死に震わせるとか、また車椅子の上で顔や腕を激しく動かしている人もいた。口だけでなく、顔で歌い、目で歌い、頭で歌い、手や足で歌う人達である。

中には歌に興味がないという顔付きで、ぼんやりと座るとか横になっている人も数名はいた。

横浜駅に近い「たんまち福祉活動ホーム」で、今日8月10日は、月に2回ある音楽の時間があった。歌うことの大好きな障がい者の中には、先生の来る前からピアノの周囲に仲間と立ってソワソワしていた人もいる。

「手の平を太陽に」の歌が終わると、次に曲は「僕らはみんな生きている」や「人間っていいな」や「ミッキマウス・マーチ」へと続いていった。途中からタンバリンや鈴などの楽器を持ち、部屋中がますます盛り上がっていく。

「はい、とってもいいわよ」

「調子に乗ってきたわね」

角田先生の優しい声に障がい者の表情がより明るくなり、歌声もさらに大きくなっていった。

「ではお待ちかねの象列車をいきましょうか。11月には久しぶりの舞台もあって、希望者は歌うことができますので、頑張ってやってみましょう」

「ワー!」

障がい者の中には、両手を上げるとかピョンピョン飛びはねる人もいた。

ピアノから、「ぞうれっしゃがやってきた」のメロディーが流れると、それまで以上に大きな口を開ける人や、または体の動かし方が激しくなる障がい者もいた。目の輝きも一段と高まる。声の大きさや体の表情などから、みんながこの歌を楽しみにしていたことがよく分かった。

「ぞう列車よ走れ 闇をこえて走れ・・・」

テンポが速くなって、みんなの熱気も最高潮に達した。肘を曲げた左右の両腕で、勢いよく車輪のように回している女性もいれば、ピッピーと笛を元気に吹いている男性もいた。

やがて最後の曲は、みんなの希望で「ビリーブ」をゆっくり歌い、10時から始まった音楽の時間は11時半になって終わった。

・  障がい者に教えられて

終わってまだ顔の汗を拭いている角田さんから話を聞いた。

「最後まで同じリズムで歌うことのできなかった人が、今回はきちんとできるようになりました。楽しい曲には、心の底から素直に楽しんで歌ってくれますし、さらに発表するという目標を持っていれば、より成長するものですね」

ずっとケアを受けてきた障がい者にとって、人の前で歌を発表することは大きな励みになる。その発表の場が、他人の何かの役に立つのであればなおさらである。

「クラシックだけが音楽と思っている人もいますが、もっと音楽は奥が深いものですよ。ここの障がい者との出会いで、私は音楽の大切なことを教わりましたね。たとえ口で美しく発声することができなくても、その曲に気持ちを込めることが何よりも大切なことで、気持ちさえあれば体を使って素敵に歌うこともできるのですよ」

音楽に限らず、芸術や文化といわれているものの全てがそうだろう。既成概念である形や一部にとらわれることよりも、人々の心に触れる気持ちを持つことが大切である。

・また「ぞうれっしゃ」を歌いたい

残念ながら今日の音楽の時間に、どうしても参加できなかったホームの仲間がいる。その一人のKさんは、これまでに鎌倉や横浜の大舞台に車椅子で参加し、多くの仲間と一緒になって「ぞうれっしゃがやってきた」を歌い、発表会をりっぱに成功させてきた一人でもある。幼いときから原因不明の脳幹出血が何回も続き、今は病院のベッドで寝たきりとなっている。すでに流動食や水すら飲み込むことができず、寝返りもできない状態になっている。

そうしたKさんを、小山所長さんたちと一緒に私は見舞った。口も不自由になり、話す言葉もだんだんと分からなくなっているが、それでも頭脳はしっかりしており、短歌を創っては見舞いの人に口述筆記してもらっていた。

「また『ぞうれっしゃ』を歌いたい?」との問いかけに、一瞬Kさんは目を輝かした。

「元気になってまた歌おうね」

その呼びかけに、Kさんはかすかにうなずいた。

Kさんの冷たい指を私はそっと握り、ベッドを静かに離れた。

・  みんなの願いは

小山さんから話を聞く。

「ぞうれっしゃの歌の中で、動物園の園長さんに向かって軍人が、『動物を殺せ!』と命令する場面があるでしょう。すると動物をかわいそうと感じている障がい者は、震えたり涙を流して抵抗する気持ちを素直に表します。かけがえのない命の大切さを訴えるこの歌に、健常者と言われている私たち以上に、もっと積極的に参加していると思いませんか」

今日の音楽の時間で歌っているときも、「ぞうれっしゃ」の歌になると涙ぐんでいる障がい者の方がいた。話は続く。

「11月の発表会には希望者のみの参加ですが、20名ほどはここから参加すると思います。練習を積み重ね、晴れの舞台に立つことを楽しみにしています。そうした目標を持つことによって、みんなの励みにもなるし、また本人は元気になります」

11月の発表会は、「たんまち福祉活動ホーム」の障がい者にとって3年ぶりの舞台となる。新しい仲間と心を一つにして、生きることや歌うことの喜びと素晴らしさを、会場へ来た一人ひとりに今度もきっと伝えてくれることだろう。

 元気な練習風景

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