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環境マインドの高揚を
-全国大学生協連合会の環境セミナーからー 05.10.25
(財)生協総合研究所 研究員 西村一郎
・ 全国各地から250名が
活発な前線のため、強い雨の降りしきる秋の京都に、全国各地から250名もの学生や生協職員たちが集まった。会場の京都大学は、樹木の芝生の緑が美しい。正門を入って正面のシンボル的な時計台が迎えてくれる。1925年(大正14年)に建ったもので、歴史を感じさせる。そのすぐ裏側が会場であった。初日の全体会は、法経本館1階の大教室である。この第一教室も歴史があり、かつての滝川事件のときの学生大会や、また70年前後の学園紛争の時には大学と学生の団体交渉の場となった。
全国大学生協連合会が開催し、今年で3回目となる環境セミナーである。10月15日と16日の二日間をかけて、大学に関わって環境問題に取り組んでいる団体や個人が集まり、経験の交流などをする場である。いくつもの大学では、学生が自主的に環境サークルや環境ISO学生委員会を立ち上げて活動している。
開催主旨の文章の一部では、以下のように目的をうたっている。
「教職員、学生、生協職員、NPO、NGOが共通のフィールドで学びあい、大学、環境サークル、生協等の役割とコラボレーション、そこから何を目指して活動していけたらいいのか、何を活動として進めていくか、様々な活動などの例を共有化し、想いを共有しあうことで、新たな活動の発見とこれまで培ってきた活動の検証と改善、次なるアクションプログラムを持ち帰れるセミナーとします」
昨年の千葉商科大学には170名の参加だったとのことで、今年は5割ほど増えており、それだけ学生の間で環境問題への関心が強まっているのだろう。
・ 環境問題は待ったなし
全大会は、元気な学生のペアによる司会で始まった。最初に挨拶に立ったのは、京都大学環境安全保健機構長の大嶌教授である。
21世紀は、人口、食糧、資源、エネルギー、そして環境が大きな問題になるとし、特に石油について触れていた。原油の取り引き価格が、1バーレル(160ℓ)で60ドルから70ドルの間で推移し、すでに始まっているガソリンの値上げなどの社会への影響や、世界中で今の消費が続けば40年で石油が枯渇することを強調されていた。かなり以前から、石油は40年で無くなると言われてきたが、最近の技術の発達で、世界中にある石油の量はかなり正確にわかるようになり、その結果の計算だそうだから今度は間違いがない年数である。その石油を一番使っている国はアメリカで、次が中国、3番目が日本とのことである。したがって40年経つと、石油によって成り立っているわが国などは、産業や暮らしなどが一変することになるだろう。
石油の他にも石炭やウランなどがあるが、どちらも有限の天然資源であり、利用が進めばいずれはなくなってしまうことは石油と同じである。たとえば石炭は200年ほどもつそうだが、石油がなくなって石炭だけの利用になると、わずか20年で地球には存在しなくなってしまう。
ところでダイオキシンやフロンなどが、よく環境では問題にされる。こうした物質には塩素の存在が大きく関わっており、その塩素は食塩を電気分解してソーダを産出するときに副産物として生まれていくる。このため大量の塩素を使う社会構造になっていることが問題だとの指摘であった。確かに問題が発生する一番最初の時点から対応しないと、本質的な解決にはならない。
・ 循環型社会の形成を目指し
記念講演1では「環境型社会の形成」と題して、京都大学環境保全センターの酒井伸一教授からパワーポイントを使った話があった。
最初は「ごみのゆくえ」として、法律では廃棄物との名称で、「汚物または不要物であって、固形または液状のもの。ただし、核廃棄物は除く」と定義しているが、これでは何をさしているのか不明で、要は目に見えるものは全てが廃棄物になると説明していた。確かにリサイクルしても最後には廃棄物になるし、水に流すとか、もしくは燃やしてしまっても、どこかにゴミは蓄積されていく。
京都大学では、以前から家庭ごみについての細かい実態調査をしている。紙や生ゴミやプラスチックなどについて、実に300項目に分類して経年の変化を追跡しているというからすごい。それによれば、家庭のゴミで目立つプラスチックは、重量が10%程度であるが、容積にすると約40%にもなって問題だとのことである。またプラスチックだけでなく紙などを含めた容器包装材全体でみると、重量は20%程度になるのに対して、容積は実に約60%にもなり、この傾向は25年もの間はほとんど変わっていない。
また家庭からのゴミで多いのは生ゴミである。生ゴミでは、約50%が調理くずであり、重量では38%が食べ残しとなっている。また開封していない食品が11%あり、その内の62%が賞味期限内というから驚きだ。世界中には、たくさんの人々が飢餓と闘っているというのに、我が国はいったいどうなっているのだろうか。食品がこうした状態をとらえて、飽きるほど食べる飽食ではなく、投げ放って捨てている放食であると表現しているそうだが、確かにそうした面を持っている。
こうした国内の廃棄物の状況を踏まえて、政府の進めている対札を紹介していた。一つは、2004年のG8サミットで日本から提案した3Rイニシャティブの開始である。3Rとは、リヅュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)の3つの頭文字のRを集めた言葉である。
この3Rを我が国で推進し、2000年段階で5600万tある最終処分量を、2010年には2800万tまでもっていこうとしている。このためにも、容器包装、食品、自動車、家庭電化製品、建設資材については、個別リサイクル法に基づく目標を設定することにしている。
こうした考え方は、2000年に制定された循環社会形成推進基本法に沿ったものである。この基本法では、次の3点をポイントとしている。
① 何よりも「ゴミを出さない」こと
② 出たゴミは、「できるだけ資源として使う」こと
③ どうしても使えないゴミは、「きちんと処分をする」こと
この基本法では、循環型社会を次のように定義している。
「製品等が廃棄物等になることが抑制され、ならびに製品等が循環資源となった場合においてはこれらについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源においては適当な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」
こうした基本方向を法律で定めた2000年は、循環型社会元年と称し、20世紀までが消費の時代であったことに対し、21世紀を循環の時代にしようとしている。世界的にみても豊かと言われている我が国では、国民一人当たりの燃料と資源を加えた生活エネルギーが、1日にほぼ体重に匹敵する44kgにもなり、さらにはそれらを維持するため隠された物質フローを足すと、実に5倍の220kgにもなるとのことであった。
産業界での3Rはもちろん重要であるが、同時に家庭生活における3Rの推進も、ゴミに日本が埋もれないためにも極めて大切なことである。
・ 温暖化対策
記念講演の2人目は、弁護士でかつ気候ネットワーク代表の浅岡美恵さんである。「京都議定書発効後の温暖化対策の課題」のタイトルで、酒井教授と同じくパワーポイントを使っての説明があった。
まずは地球を大事にしないと、私たちの命そのものが危ないとし、2005年の夏に2つの警告があったとして、ハリケーン「カトリーナ」とアスベストを取り上げていた。アメリカで大惨事を招いたハリケーンのカトリーナやリタは、地球温暖化によって海面が上昇することによって発生し、より強力になっている。
またアスベストは、すでに1960年には科学者が、人体に入ると肺に刺さってガンになって死亡すると警告していた。そのため欧米では早くから対策を講じていたが、我が国では国民生活よりも産業界に配慮して具体策が後回しになってきた。その結果、各地でアスベストに関わった作業員だけでなく、生産工場の周辺で暮らしていた市民の中でも死亡例が発生し、大きな社会問題となっている。つまりアスベストの被害は、残念ながら科学に基づく予見通りになっている。
この点では温暖化も同じである。これまでブッシュ政権は、地球の温暖化には科学的根拠がないと否定的であったが、やっと2005年のG8で、「人間活動が温暖化の主要な要因」と認めた。1880年の観測史上最も暑い日が1990年代以降に集中し、北極や南極や氷河などの氷が溶け、各地で集中豪雨や干ばつといった異常気象が発生している。1970年からすでに0.5度も上昇し、このことが超大型のハリケーン発生につながるとアメリカの科学者は指摘してきたし、事実そうなっている。つまり巨大ハリケーンによる被害は、もちろん自然災害ではあるが、それは人為起源災害でもあり、こうした仕組みは西太平洋で発生する台風についても同じであるから、決して他人事ではない。
ハリケーン「カトリーナ」の直撃を受けたニューオリンズにおける惨事の背景には、いくつもの人為的要因がある。産業を優先して自然環境に対する負荷を強め、例えば地下水の取り過ぎによって市街地の土地が沈下し、水害による影響を大きくしている。こうしたことは日本でも共通しており、名古屋などの都市においても住宅地の沈下があり、台風の風雨による被害を大きくしている。
こうした被害は、市民の中でも特に社会的弱者である貧困層を直撃している。発展途上国と先進諸国で対比して語られてきた南北問題が、国家レベルだけでなく同じ国の中でも貧富の差を生んで命の安全すら脅かしている。ちなみに世界中のGNPは、1991年の国連開発計画(UNDP)によれば、人口の2割を占める先進諸国の裕福な人たちが84.7%を占め、最も貧しい人たち2割の1.4%を大きく上回っている。
温暖化は、自然界にも少なからず影響を及ぼしている。以前であれば暑い地域にだけ生息していたマラリアやデング熱を媒介する蚊が北上しているし、実になることのできないブナの木が増えていることも一例である。
他にも浅岡さんは、たくさんの資料を写して説明していった。温暖化に大きく関わっている二酸化炭素は、大手の発電所、製紙、製鉄、石油精製などわずか約180社で占めていることや、ヨーロッパに比べて我が国の家庭では暖房費が少ないことなどを報告していた。
また身近なことから温暖化対策の効果的なこととして、以下の項目をあげていた。
① 季節の野菜を食べる。ハウス野菜は路地ものに比べて5倍のエネルギーがかかる。
② 缶やペットボトルの飲料を飲まない。容器1個Qお作るのに、テレビを17時間つけるのと同じエネルギーが必要。
③ 簾(すだれ)、よしず、ゴーヤカーテンで太陽光を遮る。ガラス窓1枚の西日はエアコン1台分。
④ ク―ル・ビズの利用。ネクタイや上着をとり冷房温度を上げる。
⑤ ウオーム・ビズの利用。一枚着込んで暖房温度を下げる。
次世代を担う子どもたちに、いったい私たちは何を残すことができるのかと、熱く浅岡さんは参加者に問いかけて話を終わった。
・パネルディスカッション「環境課題に何をすべきか」
休憩をはさんで初日の後半は、「環境課題に何をすべきか」をメインタイトルとし、「学生に期待すること、生活暮らし、生協事業体、教育学習の視点から」のサブタイトルで2時間のパネルディスカッションとなった。座長であるNPOコンシューマーズ京都の原理事長から包括的な問題提起があり、5人のパネリストからの報告が続いた。
1人目は、エコリーグの溝口関西事務局長である。私にとっては初めて聞く名前であったが、漢字で表現すると全国青年環境連盟であり、全国で150の団体が加わり、大学生を中心にして高校生や社会人など16歳から30歳までの約2000名が参加し、環境をキーワードにしてネットワークしているNGOである。ここではネットワークが持続可能な社会を実現し、人と人がつながれば新しいアイデアや活動が生まれ、活動や価値観が広がり、活動や社会への影響力が強まるとしている。活動内容としては、環境活動をしたい青年の総合サポートセンターとして、ネットワーク・マネジメント・キャリア・インターナショナルの各サポートをしている。
最近の事例として、コピー機の横に両面コピーを呼びかけるポスターを貼り、現在は47の大学で取り組んでいる。また年間で245億膳も使う割り箸に注目した学生が、かけはしネットワークを結成し、まず外国産の割り箸を使っている店から国産の間伐材の割り箸や、洗って使うことのできる塗り箸の店の利用に切り替えることや、さらには各自が自分の箸を持参することを呼びかけている店の利用を強調している。
こうした活動などを通してエコ・リーグでは、自分次第で何だってできることや、相談して一緒に活動する仲間は全国にいるし、まずはできる簡単なことから行動を起こしてみようと呼びかけていた。
2人目は、山口大学にあるエコファイターズから「学生主体の環境プロジェクトー3Rを育て、地域市民に連なる教育活動―」と題した報告があった。学生が自主的にキャンパスの環境問題を考え、仲間と協力して解決策を提案し、実行する機会を作るため、大学院、学部生、教職員、山口大学生協などから約20名が参加している。学内のペットボトルや空き缶の回収に取り組んで資源化をすすめ、レジ袋を削減するため独自のデザインによる買い物袋を提案し、また卒業生からいらなくなった品物を譲り受け、格安の価格で欲しい学生に販売している。
今後は参加する学生の輪を広げ、活動の持続と発展が課題となり、活動の動機付けを強め、山口大学で学んでいる工学的知識やノウハウの活用なども視野に入れていた。
その後で、地元京都大学生協環境委員会E―COOPや信州大学ISO学生委員長から、それぞれの取り組みについての紹介がった。
こうした各地の先進事例を共有した後で、助言者を含めて会場の参加者で質疑応答や議論をした。最終的には原座長から、大学生協としての強みである①研究や知識の豊富な大学の中にある、②全国に仲間がいる、③地域社会との連携をもっと活かして取り組みを広げる提案があって終了した。
夕食を兼ねての交流会が、京都大学生協のある食堂で2時間ほど開催となり、会場を移した。さらにその後も宿泊場所であるコープイン京都ではミニセッションの場があり、遅くまで希望者は年に一回の交流を楽しんでいた。
・ 6つの分科会で
2日目は、同じ京都大学を会場にして、9時から12時まで以下の6つの分科会が開催となった。
分科会1:環境を正面に据えて 事業活動の課題と先進事例の共有
分科会2:食育と環境を考える
分科会3:学生の活動を支援 マネジメントから就活まで
分科会4:大学の教育プログラムから学生の大学環境管理運営への参加
分科会5:大学の環境マネジメント構築の研究と環境報告書の作成
分科会6:地球温暖化の危機的状況と対策、私たちの行動は生活暮らしから
それぞれの分科会では、4から6の事例が報告となってテーマに沿った議論を深めた。
・分科会2「食育と環境を考える」
私は分科会2「食育と環境を考える」の座長を頼まれていたので、そちらの会場に入った。最初に座長としてこの分科会のテーマに対する問題提起をさせてもらった。
まずこの分科会の目的としては、参加者が食育と環境について自らとの接点を自覚し、今後の暮らしや生協事業に活かすヒントを見つけることとした。そのうえで「食育と(自然)環境」を考える本論である。人(ヒト)がどこで生きるにしても絶対必要なものは、空気、水、土、食べ物、エネルギー、仲間であり、それらのどれにも自然環境は密接に関係している。
ところで最近話題になっている食育については、生活者サイドに引き付けると、「一人ひとりが食に興味を持ち、食を通して生きる力を生涯にわたって発揮し、体と心を育むこと」 と定義していることを紹介し、食育の7大構成要素として、食べ物・体と心・栄養・調理、廃棄・食文化・自然環境・政治と経済を挙げた。
今回のテーマである自然環境では、動物の1種であるヒトが、植物や他の動物を食べて生きていくには、自然との共生が最重要であるが、その自然は次のような点で今大きな問題を抱えている。
①畑の砂漠化、塩害化 ②海洋資源の枯渇化 ③エネルギーの消費 ④水の消費
⑤地球の温暖化 ⑥森林の削減 ⑦世界や日本のマクロだけでなく、生活圏である地域の変化も視野に
こうした環境と自らの食との関連を考えるうえで、自分の飲食物と、その生産者や加工者、流通業者、廃棄業者などを自分の周りに描いてみる「食の曼陀羅図」作成も提起した。
その上で生協の課題である。運動面では、生協の組織を使って、大学や行政やNPOや他の協同組合などとの連携を強め、食との関わり体験や交流の場づくりが大切である。また事業面では、生協の店舗を食生活の発信基地にして、メニューへの反映や各種のイベントなどを行い、結果として経営数値の改善につなげることを投げかけた。
事例報告は4本あった。まずは「地産地消費の取り組み」と題して、滋賀県立大生協の梅田専務からの報告である。不味いご飯の改善から、近くの美味しい近江米に切り替えることをきっかけに、アスパラなどの野菜からつながりが広がり、卵や醤油なども地元のものを使うようになった。2004年度の仕入れ金額の中で、地場産は15%になっているとのことである。
2本目は、「地域生産者との取り組みー山科人のおいしい水と空気からー」と題して、京都橘学園生協の東川店長からの報告があった。大学の近くにある生産者と学生を含めて交流し、市場にまわらない規格外や傷物の農産物をもらい、それを郷土料理にするなどして安く提供し、結果として損益の改善にもつなげているからユニークである。
3本目は、「ミールクーポンで環境情報の提供」をテーマに、大学生協中四事業連合の朝日フードサービスリーダーからの報告があった。大学内における現状の生協食堂の問題点をあげ、それを改革するためにも食育を担い健康な大学生活を保障し、食文化と食糧や環境を守り、かつ憩いと交流の機会を提供することを使命とし、そのために食育ミールクーポンの導入を近く導入しようとしている。
4本目には、「大学と生協の連携事業―食農環心教育―」と題して京都府立大学の学生の松井さんからの報告があった。生協食堂の生ゴミを堆肥化を進める中で、臭い消しのために使用済みの割り箸を利用して炭を作って入れるとか、さらには排水溝にあるグリストラップに入れて、油脂の除去にも効果をあげている。
多彩な各地における「食育と環境」に関わる取り組みを共有化することができた。
